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第2章
3
僕は砂浜に降りると、服も気にせず寝転んだ。
さらさらと耳のあたりで砂のこすれる音がやさしい。
なんだか。少し気が軽くなる。
僕はこの夏休み。
久々に「ゆとり」に会いに来た。
それも、特に理由も無い。
思い立ったようにして、急に会いに来た。
あの事故から、一度も会いに来ていないのに・・・。
急に、この「北里町」へやって来た。
何故?なぜ、僕は「ゆとり」に会いに来たのか?
理由はわからない。
けれど、なぜか。会いたくなった。
まるで「ゆとり」が僕を呼んでいるように・・・。
いや、それよりも。。。
「ゆとり」に導かれているように・・・。ここに来た・・・。
寝転んで見る空は青くて何処までも広がっていた。
限りなく広がる。
そんな月並みな表現しか浮かばないくらい。
青く何処までも、青く広がっていた。
空を自由に舞う鳥。
夏の日ざしの匂い。
海の汐の香り。
あがり始めた太陽のあかりがまぶしくて、僕は目を閉じる。
「ゆとり・・・」
僕は、ふと思い浮かべる。
あの夏の「ゆとり」を・・・。
一緒に、海に行ったあの夏。
一緒に、すいか割りしたあの夏。
一緒に、自転車で丘を駆け上がったあの夏。
ゆとりがいつも隣に居た夏。
僕は、今思う。
やっぱり、照れくさかったけれど・・・。
「ゆとり」が好きだったのだと・・・。
幼なじみ。
そんな2人だったけど・・・。
僕は彼女が好きだった。ということを・・・。
静かに目を閉じていると・・・。
波の音。
砂浜の砂が日に焼け始める音。
潮風が砂を運ぶ音。
自然の息吹が聴こえる。
そして、それは、いつしか眠りに誘う・・・。
すっと、眠りに招かれる。
まるで、その自然と一体化するように・・・。
僕は、眠りに誘われる。
やがて・・・。
眠りから覚めようとする頃。
夢を見ているのかも知れない。
いや、夢を見ている。
「ゆとり」の声が耳元でゆれる。
「ねぇ。」
ゆとりの優しい声だ。
「ねぇ。」
ゆとりの可愛い声だ。
僕はこんな夢なら何度でも見たい。
そんな風に思えた。
もう少し眠りたい。
けれど。眠りから覚めるのは、いつも夢を見かけたころ。
いつだって、夢が僕を「現実」の世界へ誘う(いざなう)。
いや、引き戻していく・・・。
少しずつ、僕は目を覚ます。
ほのじろむ視界の向こうには、いつだって「現実」がある。
その「現実」に戻されようとしている。
やがて、波の音がする。
やがて、潮風のにおいを感じる。
やがて、太陽のまぶしさの向こう。
目を開ける。
「あ・・・」
「現実」はそこにある。
「現実」の世界。時間。
そこに彼女がいる。
「あ・・・あの?どうしたんですか・・・?」
彼女は少し戸惑った顔で僕を見ている。
これは「現実」だろうか?
まだ、夢の中にいるのでは、なかろうか?
けれど。もう目は覚めている。
夢ではない。
「あの・・・」
そんな女の子の声が耳元で聞こえる。
次へ。
へ へ
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