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タイトル 「無題」
第11章 プレゼントはそらのむこう
亜季との待ち合わせは7時30分に南台の改札口。
俺は身支度を整え、プレゼントを2つ用意した。
6時のニュースが流れた。
「今夜は21世紀最初のクリスマス。街は若者達が繰り出して聖なる夜を楽しんでいます・・・」
鮮やかなネオンの下を手をつなぐカップル。
にこやかに笑う彼女と肩を組む男。
画面は渋谷のスクランブルを映した。
『寒そうだな・・・』
TVから見たところみんなあったかくしていた。
手袋をするひと。
もこもこのコートを着てる人。
首に巻かれたマフラーは首元までキチンと巻かれていたこと。
それらから寒さを感じた俺は、鏡で身なりを確かめるとコートにマフラーを羽織って家を出た。
俺はそこかしこからメリークリスマスという声が聴こえそうに思えた。
きっと今夜は家族でわいわいやるのだろう、お父さんはケーキを持って歩く。
だから、街はいつもより静かに思う。
みんな家の中でクリスマスを過ごしているのだろうと考えた。
普通に思えば、一年のうちの1日に過ぎない。
しかも、年の瀬なのに。それでもみんな心のどこかでクリスマスは無視できない。
例え、興味が無くとも、街を歩けばあちらこちら赤鼻のトナカイが聴こえてくるから。
俺は駅前の繁華街というほどのものではないが、そこをこえて鐘の公園へと足を進めた。
手には手袋をすべきだった。
かじかむほど寒い。
北風がコートの隙間を狙っていた。
コートのポケットに両手ともつっこんだりひっこぬいたりしていた。
『もうすぐだ・・・』
もうすぐそこに公園が見えていた。
けっこう歩いた。
家から20分近くかかってしまった。
でも、約束の時間には15分は早くやってきた。
そんなには大きな公園ではないが、人はまばらにいる。
きっと、ここに鐘があることを知っているのだろう。
何組かのカップルが集っていた。
そう、この公園はクリスマスの日には特別、よるにも鐘を鳴らすのが恒例となっている。
普段では夕方5時までなのだが・・・
7時8時9時のちょうどの時間にそれぞれの時間分打ちならされる。
俺はまず周りを見渡した。
もしかしたらもう来ているのでは?と思ったがまだのようだった。
時間もあったのでぐるりと一週まわったがそれらしき人影はない。
この公園は俺が幼稚園のころ作られたものだ。
市の持ち物で、もうかれこれ10年以上になった。
周りを囲うようなイチョウの木などと芝生があるだけで他には何も無い。
この時間を告げる鐘の音以外には・・・
「そろそろ、7時なのにな・・・」
俺は近くにあった木にもたれた。
有紀がまさか公園の場所がわからない、とか忘れるなんてありえない。
きっと支度に手間取っているのだろう・・・
と、おもったそのとき現れた。
のは・・・
一枚の手紙だった。
よりかかった木の下。
足元に変な感触があったため、足元を見たら一通の手紙があった。
宛名は「浩志(こうじ)君へ」とあり、裏には有紀とかかれてある。
俺はすぐに手で封を開けて中身を取り出すと街灯の下、その場で読むことにした。
メリークリスマス。
よかった。みつけてくれたんだよね?
この前はホントにありがとう。
とってもたのしかったよ。
・・・じつはね。
きょう、わたしはここにはいないの・・・
また、引っ越すことになったから。
いまわたしは飛行機に乗ってる頃だと思います。
ごめんなさい。
ほんとは今年いっぱいこっちにいる予定だったの・・・
だから、プレゼントを渡せないけれど・・・
ここに入れておきました。
気に入ってくれるといいな・・・
それじゃ、ホントにありがとう。
有紀
P.S 今度、こっちに来たときはまたあってくれるかな?
よかったら、そのときのクリスマスまたここで逢いたいな・・・
俺は意外と冷静に受け止められた。
まるで、こうなるのをわかっていたかのように・・・
そして、なぜかもう一度絶対に逢える気がした。
あの日の渋谷のように。
今度はきっと俺が見つける番だと思う。
手紙の中には小さなプラネタリウムが入っていた。
キレイな半円をかたどったその中をのぞくと星空がひろがる。
俺とおんなじプレゼントだった・・・
俺はそらを見上げた。
有紀ののっている飛行機は見えない。
だけど、俺は北風のむこうを見上げる。
「 また。逢える・・・」 と、信じて・・・
第11章 終わり
おわりに・・・ ホワイトスノーは時間(とき)をこえて・・・
俺が駅につくと亜季が待っている。
「おそい!」
「おぃ・・・まだ10分も前じゃないか?」
「もう、わたし。駅についてから・・・けっこうまったんだよ・・・」
亜季はクリスマスらしく機嫌が良かった。
話しているときの表情にそう出ている。
クリーム色のコートをかるく肩に羽織って、ブラウン色のロングブーツ。
セーターは女の子らしく、カラフルな色合いだった。
「どうする?これから。どっかいきたいとこは?」
「うん。そ、だね。鐘のなる丘公園でも行こうか?」
数々のクリスマスソングが流れる中を二人は歩く。
俺は今きた道をまた引き返しながら、亜季にプレゼントを渡す。
渋谷で見つけたCDとイヤリングを・・・
「ね。どう似合う?」
亜季はさっそくイヤリングを耳にした。
オープンハートをかたどったものが好きな、亜季にはとっても似合った。
耳元でやさしくゆれる。
ささやくように・・・
「あぁ。似合うよ」
亜季は少しテレ笑いを浮かべる。
「あ!雪。雪だよ。ほら・・・」
そらから舞うのは確かに雪だ。
「ホワイトクリスマスだね?」
ゆっくりとまちに降りそそぐ。
白く染めていく。
みんなの心に灯がともる。
そらを見あげた。
ゆきがふる。
「亜季。メリークリスマス」
亜季のほほえみが俺をやさしくつつんだ。
THE END
あとがきへいく。(あとがきも読む)
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