![「守るべきもの」](../mamoru1.gif)
第3章
警察署に、彼は居ませんでした。
彼は病院に搬送していたのです。
私はすぐさまでも彼に会いたかった。
彼の身が心配でした。
けれど、警察署では事情聴取との名目で、色んな話を聞かれました。
話が終わらなければ、彼とは会えないということでしたので、
私は、おとなしく冷静に話をしました。
彼は「自殺」を図ったようだ。と、いうことから話が始まりました。
「あなた。お名前は?」
「咲花 なごみです」
「咲花さん。あなたは皆元さんとはどういった関係?」
「はい。皆元さんとは・・・去年からの知り合いで・・・
今は学部は違いますが、同じ大学に通っています」
もう50はとっくに超えたと思われる、
少し、髪の毛が後退した警察の取調官の人は、話をドンドンと切り出します。
その口調は、その顔つきの鋭さや目の奥のキツさに反しているように、
優しげに。勤めて優しげに問い掛けます。
「皆元さんが自殺を図る前。。とは言っても、1週間くらい前かな。。
君にメールを送っているみたいだけど・・・」
「え?あっ、はい。」
「内容。言ってもらってもいいかな?」
「・・・。皆元さんが『探さないで欲しい』って・・・メールをくれました」
「そう・・?」
私と取調官の人。
2人きりで話をしました。
そこは、警察署内の一部屋で。
テレビなどでよくある1シーン「取調室」とは違い、
本当に普通の一部屋、学校の空き部屋のような場所でした。
窓もあって、そこからは日も差しています。
「皆元さん、自殺をほのめかすようなこと言ったりしませんでしたか?・・・
何か。そういったこと。気がつきませんでしたか?」
「いえ。私・・・」
「そう?」
2人の間にある空気は重たく感じられました・・・。
少なくとも、私には・・・。
話す言葉が響く部屋。
真っ白に塗られた壁が、潔白の壁。
響く言葉が、心をますます重荷をかけるように思えます。
「実はね。皆元さん・・・この自殺を図った時、
あなた宛に手紙を書いているんだ。」
「・・・」
「唯一、君にこの手紙を残して、彼は自殺を図ったようなんだ・・・」
私は、なんとも言葉も出ませんでした。
それは、何も考えることができなくなったように・・・。
思考がほんの一瞬だけれど停止したからです。
「・・・これがその手紙・・・」
警察の取調担当と思われるその人は、
きれいなままの封筒を私の目の前に差し出します。
「・・・今、読んでも良いし・・・後で読んでも良い」
その取調官は、そう言って手紙を渡すと、
私の後方にあるドアのある方に歩き出し、
私の視界に入らないように気遣ってくれたようでした。
きっと、私がその場でこの「手紙」を読むと考えたのでしょう。
次へ。
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