TOPページ メールフォームのページ へ サイトマップ へ 最新情報 へ 漫画・アニメ系を読む あなたの作品をご登録します。 趣味・コラム系の読み物を読む 小説系を読む HOME へ戻る
このページは文字サイズの変更が可能です。右のボタンで調節してください。 文字サイズ   
右のボタンをクリックすると目次が出ます。 クリックすると、しおりがでます!  
Sugarpot 書き下ろし
風のある風景

第2章 ふきぬける午後の風

1

ユカリとあやな とは「仔馬家」で別れた。
2人は、まだ遊んで帰るらしい。
「一緒にあそぼ!」と誘ってくれたが、
コンピュータでプログラムを組まなければならなかったので、今度遊ぶ約束をして別れた。

僕はそこからはまっすぐに帰ってきて、
早速、自室の机上に置いてあるPC(パソコン)を起動する。
僕は出かけているときは外からのアクセスを完全に遮断するため、
PCの電源を切って、ルータも外部からアクセスできないように切っておく。

このPCは授業を受けるためのコンピュータではない。
それはそれで別に置いてある。
あれは完全に高校の授業(ネット授業)を受けるためのコンピュータだ。
パーソナルコンピュータ、PCではない。

学校のみんなは、NPC(エヌピーシー)と呼ぶ。
名前の由来は、「ネット用のPC」だと言う人もいれば、「ノットPC」の略だ。という人もいる。
ならば、NPCではないPCとは、こっちのパーソナルなものになる。

外見も中身も秋葉原に行って、カスタマイズしたから、
澄んだブルーのアクリルデザインで、一目で自分のPCとわかるし、
CPUは勿論、チップメモリーなどの基本能力も全然、断然違う。
グラフィックに関しては申し分ない。
ちなみにこちらはノートPCだ。

僕は、机を前にスチール製の椅子に腰掛けた。
背もたれの部分は強化プラスチックだ。
ひんやりとして、この時期は気持ちいい。
肘掛の部分が割れかけているところ以外は、お気に入りだ。


PCはスイッチを灯すと、起動が始まる。
3秒と待たずに起動ランプが赤から青になって、立ち上がる。
ディスプレーには、相変わらずのマークが浮かび上がる。
僕が生まれる前の20世紀のころから、変わらずに・・・。


まず、ネットに繋げる。
といっても、ホームネットワーク。LANだ。

LANはここ10何年かで急速に発達した。
それは、電気製品の発展が目まぐるしいかったからと、
電機メーカー各社が、規格の足並みをそろえたためだろう。
家庭内を無線で其々の電気製品を結ぶ回線LAN。によって家庭の全てが制御できる。

電子ジャー・ポットの電源のON・OFFは当たり前。
掃除機は自動センサーで床を這いずり回る。
お風呂・トイレも自動清掃機能がある。
ドア・窓の開閉・清掃までも電気仕掛け・・・。
電気製品といわれるものは全てLAN対応になっている。

当たり前のように外出先からでも、カギの閉め忘れが確認できる。
なんていうのは、古い。
今は、忘れて出かけても、3分後などの設定時間後、携帯に通知する。
これがまた、古くなりつつあって。
現在は一般の家庭でも「指紋照合システム」などをカギにし始めている。

また。万一、停電が起きても屋根のソーラーシステムがあれば、
自家発電備蓄を利用してセキュリティーにのみならず、
電気消費の3日分くらいは大丈夫になっている。

万全の体制。と電機メーカー各社はコマーシャルを頻繁にうっている。


僕はそのLANを使って、2回の自室から、キッチンのコーヒーメーカーに電源を入れる。
ちょっと前まではコーヒー豆をのせて、お湯を注いだものだが、
今はコーヒーメーカーの下部が、豆の貯蔵部になっていて、
ここに豆を入れておけば、あとはフィルターもいらない。

ただ・・・。
ただ、出来たものをここまでは自動で持ってこない・・・。
普通の家庭では・・・。


2


コーヒーメーカーにスイッチを入れるようにマウスで操作した後に、
僕はキーボードを叩く。
暗証番号(パスワード)の入力だ。
そして、ノートPCのはじに備え付けた「指紋読み取り機」に人差し指をのせた。

これは一応、管理システム(ロック)になるが、
こんなものは、もう古い認証方法だ。

いまどき、キーボードで入力なんて・・・。使うことが少なくなった。
玄関などのキーとしてはいまだに使われているが、
こういったセキュリティーとしては面倒な作業はできるだけ無い方が良い。

現在の大概のセキュリティーは、バイオメトリックスが主流になった。
バイオメトリックスとは、指紋・声紋などの生体認証システムのことだ。
特に、血管認証などが多く用いられている。
手のひらや甲などに赤外線を照射して静脈の分布パターンを読み取り,
その特徴から識別するため、非接触で識別精度が高いのが理由のようだ。

だから、PCに取り付けられた小型カメラで、人相・骨格で、人物などの対象物を判断したり、
眼光の照り返しで判断するものも、共に「非接触認識」だ。ということを考えると、
おのずと、めんどうな作業の無い方法が主流だと言えるだろう。

「さてっと・・・」
僕は一人つぶやく。
今度はアイコンをクリックする。

「ピュンッ」と高い電子音がする。
認証成功の証だ。
ディスプレーには、1人の少年が映る。


「こんにちわ・・・」
画面には僕の家の地下室が映る。
カメラに向かって、少年は話し掛ける。

年は12歳ぐらい。
彼の名は「来斗」(らいと)
別の名を「R08-Style07」という。

僕はディスプレーに向かって言う。
「来斗。おはよう!悪いけど、コーヒー持ってきてくれる?」
来斗は、大きく頷くと、
「はい。わかりました・・・」と、大きな声を返す。

僕はPCはそのままに、ディスプレーのみ電源を消す。

来斗は、父の残した最後の作品・・・。というかロボットだ。アンドロイドとも言われるが・・。
来斗の見た目は、ロボットらしく残してある部分が多少はある。
が、しかし。アンドロイドだとわかっていなければ・・・。見分けがつかないほど・・・。

金属でできているところは、ロボットなのだが・・。
上から、人口の皮膚をかぶせてあるから。
人間に近い印象だ。

僕は来斗のこと、そして 「来斗」 の妹 「来夢(ライム)」 を最初から気に入っていた。
なにより、来斗たちは成長する過程が人間に近かったからだ。
来斗たちより前のロボットは、「ロボットらしいロボットだったからかもしれない・・・」
                 
                    
次へ

へ 
Copyright © since 2003 読み物.net & 砂糖計画 All rights reserved.
Produced by 読み物.net & 砂糖計画 since 1999
Directed by 『Sugar pot』
& はっかパイプ & 砂糖計画 since 1999
mail for us
mailto:menseki@yomimono.net