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Sugarpot 書き下ろし
手品師の粉雪

エピローグ

僕たちは北雪町にいた。
羽衣と僕は、親戚の家から帰るかすみと一緒に里帰りすることになったからだ。
北雪町は何も変わらない。
あの日と同じ空気が流れているようなそんな風な想いになる。

東京ではもう桜が咲き出した・・・。
北の大地にあるこの「北雪町」にももうすぐ春の到来だ。

僕は羽衣とかすみと3人で歩いた。
いつも、通っていた学校までの道のりを・・・。
笑って、ずっと懐かしかった笑い声で歩いた。
あふれだす思い出はとても優しかった。

僕らは母校の北雪高校に足を踏み入れる。
校舎の窓ガラス。
校庭の鉄棒。
網の破れたバスケットゴール。

ゆめを夢見ていたあの頃。

そして、今。
かすみはこの北雪町に残って、実家を手伝っている。
羽衣は、東京で「大好きな本」に囲まれている。
僕は・・・「手品師」を夢見ている。

夢の向こう側は遠くて、僕には見えない。
その夢がたとえ、かたちが変わったとしても・・・。
一度見た夢は忘れない。
あの頃の夢は忘れない。

羽衣とかすみと僕は、一緒に卒業する夢を今日かなえる。
賞状なんていらない。
祝辞なんていらない。

羽衣とすごしたあの日々。
それを今日、卒業する。
新たな日がここから刻まれる。


「ねぇ。屋上に行かない・・・?」
かすみは穏やかな声で提案する。

屋上にでると、風が頬を撫でていく。
すこしづつやわらいでいく風が春を運ぶ。
屋上からは、北雪町が一望できる。

「なぁ。俺たちがこの学校に入学したときのこと覚えているか・・・?」

僕は2人に誰ともなく尋ねる。

「入学式の日。卒業式の日。どっちも雪が降ったんだよな・・・」
「そうだったよね・・・」

「2人ともすこし目を閉じて・・・」


羽衣もかすみも素直に目を閉じる。

「2・3分。そのまま・・・でいて・・・」

2人はじっと待っている。

「いいよ。。目を開けて・・・」

「わぁ・・・」
2人は驚く。

空から白い雪が舞う。
白い結晶がふわりと舞う。
そらをみんなで見上げる。

「すごいね・・・」
「うん・・・。」
「どうやってるの・・・?」


北雪町に冬の終わりを告げる粉雪が舞う。
手のひらでとけていく。頬にとけていく。
やさしさにとけていく。

この雪が夕焼けに変わる頃。
北雪町にも春が来る。
そう、春がやってくる。

「これでも一応、手品師・・・見習だからな・・・」

Fin


あとがきへ。

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