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1
吐息を吹きかけて。。
一人で女の子は渋谷駅のハチ公改札前。
建物を支える大きな白いコンクリート柱に寄りかかる。
ふと、彼女は腕時計に目を通す。
当初の時間はとっくに過ぎている。
今日は24日。
年末も差し迫った夜。
街を彩るイルミネーションが鮮やかに点っている。
そこかしこから、耳に聞こえるのは「メリークリスマス」の声。
彼女は待っている。
携帯電話を確かめても、メールの通知は無い。
留守番電話に記憶も無い。
かじかむ手を、手のひらを合わせている。
それでも、いつか来るだろう人を待っている。
通り過ぎ行くカップル。
みな同年代の女の子がにこやかに、腕組んで通る。
何気なく眺めては、時計が気になる。
もうすぐ、待ち始めた時間から1時間も経つ。
街はクリスマス色。
街頭で、お父さんたちにケーキをうるバイト学生。
お父さんは、手に大きな箱を持って、我が家に戻る。
誰もが少し、こころをやさしくしているように見える日。
そんな日に彼女は、彼を待つ。
2
「あぁ。。」
彼は、時計が気になって仕方が無い。。
年末の机の上。
もう、だいぶ旧型になったパソコンに向かう自分にため息が出る。
年末は、どの仕事をしている人も忙しいのだろうか?
自分だけではない。
そう言い聞かせては、せっせとキータッチを行う。
斜め前に見える卓上のカレンダーには「クリスマス・イブ」の文字。
誰もいなくなった事務所。
さっき自販機で買った缶コーヒーの湯気。
とにかく、僕はキーボードへ向かう。
「今日までにこの資料を頼む」
あたかも、当たり前のように係長は申し付ける。
断ることなど、ありえないんだ。
そういう口調で申し付ける・・・。
そして、そんな口調でなくとも・・・。
彼は断る言葉など、口から発するわけにはいかない。
事務所で、彼とともに働いているのは、暖房機。
エアコンの空調音だけがする真っ白い部屋。
彼は設定温度を2℃あげる。
と、同時にモーター音もあがる。
彼は言い聞かせるようにして、
自分の席で、ひたすらにタイピングを続ける。
次へ。
へ へ
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