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3
彼女は、待っている。
何も変化の無い駅改札。
過ぎ行く人の波。
時々、彼女を見ては通り過ぎ行く人。
彼女は新宿方面に向かう電車がとまるたび。
そこからやってくる人波みが来るたび。
期待をして待つ。
この電車で降り立つかもしれないと。。彼を待つ。
降り立つ人。
降り立つ人の姿を追いかける。
彼のシルエットを追いかけている。
今、ついた電車にも彼がいないことを知ると。。
彼女はまた、柱に寄りかかる。
近年には無いほどの暖冬。
なのに、今日は寒く思う。
本当に気温が低いのか?
それとも、自分だけがそう感じるのか?
どちらかわからないけれど・・・。
彼女は、じっと柱に寄りかかっている。
時間はどんどん過ぎていく。
時計の針ばかりが過ぎていく。
腕時計を見て、
携帯電話を見て、
ひとつ。またひとつ。。時が進む。
時計の針は待ち始めてから。。
もう、1時間30分が経つ。
4
「良しっ!」
彼はやっと仕事を終える。
疲労感は無い。
達成感も無い。
開放感でも無い。
あるのは、焦燥感だろうか。。
彼は、カバンを持つと勢いそのまま駅に駆け出す。
いつものビルの警備員に挨拶を交わす。
「メリークリスマス」の声が警備員室のTVから流れる。
ビルの自動扉をせかすようにして開け、
彼は駅までその勢いで走り出す。
そして今日、久々に感じた外気に寒さを感じる。
自分を待つ人の身を案じる。
「夕方に差し出したメールの場所で待っていてくれるだろうか?
もしも、待っていてくれないと。。」
そう、思うとますます速く走りたくなる。
右手のカバンが大きく前後にゆれる。
こんなに息せき切って走るのは、何年ぶりだろうか?
彼はそう思うが、
その次には「早くいかないと・・」と思い返して、
何も考えずに、懸命に走る。
発車間際。
駆け込み乗車。
やっとの思いで乗り込んだ「新宿方面」の山手線。
この時間にしては、いつよりは空いている。
クリスマスでお父さんたちが、まっすぐ帰宅したのだろう。
呑んでかえる人たちにとっては、まだ早い時間なのもある。
彼は、あがった息で乗り込む。
肩で息している。
駆け込み乗車のせいだけじゃない。
駅までの道のりを走ったことによることが大きい。
車窓からは、翳りだした月明かり。
いつも見慣れた風景が過ぎていく。
向こう側にモノレールの姿が見える。
やっと、少し落ち着く思いになる。
でも、落ち着いて気が付くことがある。
彼は思い出して、ふとカバンに手をやる。
懸命に走った彼。
彼自身を思い出したからだ・・・。
そう、今日はクリスマスだ。
彼は、すぐカバンを開けて確認する。
「大丈夫だ・・・崩れていない・・」
キレイにつつまれた小箱が無事だった。。。
ホッとする。
再び、つり革に手を戻すと・・・。
「渋谷」までの時間を思う。
あと、15分・・・。
まだ、もう少し、もどかしい時間があった。
次へ。
へ へ
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